「戦前の帝国陸海軍の転落の歴史から、同じ官僚組織にいる現在の行政マンが何を学ぶべきかという問題意識から出発した。だが、その旅は、組織論的なヒントをつかむといった次元を超えて、日本社会の底流に触れ、歴史のうねりというものにまで及ぶこととなった。」
著者がはじめに述べているとおり、日露戦争とノモンハン、太平洋戦争の戦史比較から学ぶべきものを探し、今の日本にどう役立てるかという視点で書いているが、不透明な日本の行く末を考える上で大きな示唆を与える。
例えば奉天会戦では当時世界一のロシア陸軍に対して、劣勢の日本陸軍は馬、砲、兵の総合力を発揮して勝つことが出来たが、34年後のノモンハンでは、ロシアが奉天の教訓を生かして日本軍を破るが、日本は教訓を生かすことが出来なかった。真珠湾で大敗を喫したアメリカはこれからの戦争は航空機主流と肝に銘じ建造中の戦艦も急遽航空母艦に改装する手を打ったが、日本は逆に海軍の主流派は大艦巨砲主義から脱しきれなかった。種々の要因はあるが、明治のリーダーのような「ジェネラリスト」が居なくなったことが大きい問題だと著者は指摘している。著者斎藤健氏は通産官僚からいまは内閣の行政改革企画官だったと思う。
ちくま新書2002年3月発行