広島管財ブログ

第77話 李登輝いまの日本を憂う

台湾の前総統李登輝が最近の著作「武士道解題」の中で「国際社会全体が不況と不安に晒されているときに、最も頼りになるべき国のひとつ(日本および日本人)まで混乱と混沌の中を漂流し続けていたら、人類社会そのものが羅針盤を失いかねない」と書いている。彼がこれほどまで日本と日本人を買っているのは、日本に生まれ台北高校、京都帝国大学に学び、新渡戸稲造ならびにその著「武士道」の影響を大きく受けているからであろうが、心から日本を愛しそしていまの日本を憂えて、やむにやまれず筆をとったという心情がこの本の随所に溢れている。

「いま日本を震撼させつつある学校の荒廃や少年非行、凶悪犯罪の横行、官僚の腐敗、指導者層の責任回避と転嫁、失業率の増大、少子化など、これからの国家の存亡にもかかわりかねないさまざまなネガティブな現象も、「過去を否定する」日本人の自虐的価値観と決して無縁ではない、と私は憂慮しています。」

日本の歴史と文化を十分に理解し、海外から冷静にいまの日本を眺めた上での、日本人に対するアドバイスと受け取ってよいのではないか。

「数千年にわたって営々として積上げられてきた日本文化の輝かしい歴史と伝統が、60億人余の人類社会全体に対する強力なリーディング・ネーションとしての資質と実力を明確に証明しており、世界の人々からの篤い尊敬と信頼を集めているからです。私自身が日本の教育の中で豊富な知育と徳育を授けられ、それを通して知識や智慧に目覚め、「人間いかに生くべきか」という根本的な哲学や理念を身につけてきたからこそ、なおのこと、この人類史的危局の中において必要とされている「日本の心」の大切さを、思い起こさずにはいられないのです。」

思い出したことがある。2~3年前、世相を憂える有識者のテレビ座談会で、いまの日本を救う指導者にだれがいるかの論議の末、最適任者は「李登輝」であったことを。